フ前半、独乙国内を流浪した妖術師[#ここで割り注終わり])やディーツのファウスチヌス僧正などが精霊主義《オクルチスムス》に堕ち込んだと云うのも……。すべて、人間が力尽き反噬《はんぜい》する方法を失ってしまった際には、その激情を緩解するものが、精霊主義《オクルチスムス》だと云うじゃないか。それにあの畸狂変態の世界を作り出した種々《いろいろ》な手法には、さしずめ、書庫にあるグイド・ボナットー([#ここから割り注]十三世紀伊太利のファウストと云われた魔術師[#ここで割り注終わり])の『点火術要論《アルテ・デラ・ピロマンティ》』やヴァザリの『|祭礼師と謝肉祭装置《フェスティヴォリー・エト・カルナヴァレ・アパラティ》』などの影響が窺《うかが》われるね[#「窺われるね」は底本では「窮われるね」]。もともと伸子は、あの乾板盗みを、ふとした悪戯気《わるさげ》から演《や》ったのだろう。けれども、その内容を知った時に、恐らく伸子は、魔法のような物凄い月光を感じたに相違ない。その突如として起った、絶命――喪心――宿命感、そう云った感情が十字に群がってきて、それまでの心の平衡を保たせていた、対立の一方が叩き潰
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