}書室の中には、アカンサス形をした台のある燭台が、ポツリと一つ点《とも》されているのみで、その暗鬱な雰囲気は、著作をする時の鎮子の習慣であるらしかった。しかし彼女は、いっこう何の感覚もなさそうに、凝《じ》っと入って来た法水を瞶《みつ》めている。その凝視は、法水に切り出す機会を失わせたばかりでなく、検事と熊城には、一種の恐怖さえももたらせてきた。やがて、彼女の方から、切れぎれな、しかも威圧するような調子で云い出した。
「ああ、判りましたわ。貴方がこの室《へや》にお出でになったという理由が……。ねえ、たぶんあれなんでしょう。いつかの晩、私はダンネベルグ様のお側におりましたわね。またその後惨事が起るその都度にも、私は一度だって、この図書室から離れていたことはございませんでした。ねえ法水さん、いつかは貴方が、その逆説的効果に、お気づきなさらずにはいまいと考えておりましたわ」
その間、法水の眼が一秒ごとに光を増して、相手の意識を刺し通すような気がした。彼は身体を捻《ね》じ向けて、ちょっと微笑みかけたが、それは中途で消えてしまった。
「いやけっして、そんな甘い插話《エピソード》ではないのです。僕
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