魔ヘ、似非《えせ》史家法水の長広舌《ちょうこうぜつ》を遮ったが、依然半信半疑の態《てい》で相手を瞶《みつ》めている。「なるほど、現象的には、それで説明がつくだろう。また、奥の屍室の中に、あるいは|紋章のない石《クレストレッス・ストーン》の一端が、現われているかもしれん。しかし、仮令《たとえ》ばそれで、一人二役が解決するにしてもだ。どうしても僕には、隠さずにいい姿を隠した、レヴェズの心情が判らんのだよ。たぶんあの男は、自分の洒落《しゃれ》に陶酔しすぎて、真性を失ってしまったのだろう」
「オヤオヤ支倉君、君は津多子の故智を忘れたのかね。では試しに、屍室の扉《ドア》を開かずにおこうか。そうしたらきっとあの男は、僕等の帰った頃を見計って、横廊下に当る聖趾窓《ピイド・ウインドウ》から抜け出すだろう。そして、大洋琴《グランドピアノ》の中にでも潜り込んで、それから催眠剤を嚥《の》むに違いないのだよ。サア行こう。今度こそ、あの小仏小平《こぼとけこへい》の戸板を叩き破ってやるんだ」
 こうして、法水はついに凱歌を挙げ、やがて、中室の奥――聖パトリックの讃詩《ヒム》を刻んである屍室の扉《ドア》の前に立った
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