Nミラー》なのでした。ですから、やや近い色でも、最も光度の高いものに対比されると、幾分暗さを増すに違いないのですから、そこにテレーズの顔が、ああいう確かな線で、くっきりと描き出された原因があるのですよ。ねえ田郷さん、貴方は史家ホルクロフトや、古書蒐集家ジョン・ピンカートンなどの著述をお読みになったでしょうが、かつて魔法博士デイやグラハムが、愚民を惑わした黒鏡魔法《ブラック・ミラー・マジック》も、底を割れば、たったこれだけの本体にすぎないのです。さて、三つの開閉器《スイッチ》が捻《ひね》られて、この一帯が暗黒になると、その時、何故に、テレーズの像が現われなければならなかったのでしょう」
そこで法水はちょっと一息入れて莨《たばこ》に火を点けたが、再びこつこつ歩き廻りながら云いはじめた。
「それが、破邪顕正の眼なのです。たぶん、算哲博士は世界的の蒐集品を保護するために、文字盤を鉄函《てつばこ》の中に入れただけでは不安だったのでしょう。それがために、こういうすこぶる芝居げたっぷりな装置を、秘《こっ》そり設けて置いたのですよ。何故なら、考えてみて下さい。いま点滅した三つの灯は、いつも点け放しな
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