フ扉を一杯に開ききると、なかには左右の壁際に、奇妙な形をした古代時計がズラリと配列されていた。外光が薄くなって、奥の闇と交わっている辺りには、幾つか文字面の硝子らしいものが、薄気味悪げな鱗《うろこ》の光のように見え、その仄《ほの》かな光に生動が刻まれていく。と云うのは、所々に動いている長い短冊振子が、絶えず脈動のような明滅を繰り返しているからであった。この墓窖《はかあな》のような陰々たる空気の中で、時代の埃を浴びた物静けさが、そして、様々な秒刻の音が、未だに破られないのは、恐らく誰一人として、つめきった呼吸《いき》を吐き出さないからであろう。が、その時、中央の大きな象嵌《ぞうがん》柱身の上に置かれた人形時計が、突然|弾条《ぜんまい》の弛《ゆる》む音を響かせたかと思うと、古風なミニュエットを奏ではじめたのであった。廻転琴《オルゴール》([#ここから割り注]反対の方向に動く二つの円筒を廻転せしめ、その上にある無数の棘をもって、梯状に並んでいる音鋼を弾く自動楽器[#ここで割り注終わり])が弾き出した優雅な音色が、この沈鬱な鬼気を破ったとみえて、再び一同の耳に、あの引き摺るように重たげな音響が
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