、その室と寝室との間の扉を鎖さしめないために、あらかじめ閂《かんぬき》穴の中に巧妙に細工した三稜柱形の木片を插入して置く。それがために銀行家は、就寝前に鍵を下そうとしても閂が動かないので、すでに閉じたものと錯覚を起し、犯人の計画はまんまと成功せしと云う。
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 法水があえて再言しようとはせず、そのまま不可避的なものとして放棄してしまったことは、平生検討的な彼を知る二人によると、異常な驚愕《きょうがく》に違いないのだった。が畢竟《ひっきょう》するところ、この事件の深さと神秘を、彼が書庫において測り得た結果であると云えよう。検事は再び法水の粋人的な訊問態度をなじりかかった。
「僕はレヴェズじゃないがね。君にやってもらいたいのは、もう動作劇《ハンドルングスドラマ》だけなんだ。ああいう恋愛詩人《ツルヴェール》趣味の唱《うた》合戦はいい加減にして、そろそろクリヴォフ夫人がそれとなしに仄《ほの》めかした、旗太郎の幽霊を吟味しようじゃないか」
「冗談じゃない」法水は道化《おどけ》たようななにげない身振をしたが、その顔にはいつもの幻滅的な憂鬱が一掃されていた。
「どうして、僕の
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