とりあえず熊城君、傭人《やといにん》の中で、最後に易介を見た者を捜してもらいたいのだ」
 熊城は間もなく、易介と同年輩ぐらいの召使《バトラー》を伴って戻ってきた。その男の名は、古賀庄十郎と云うのだった。
「君が最後に易介を見たのは、何時頃だったね」とさっそくに法水が切り出すと、
「それどころか、私は、易介さんがこの具足の中にいたのも存じておりますので。それから、死んでいるという事も……」と気味悪そうに死体から顔を外《そむ》けながらも、庄十郎は意外な言《ことば》を吐いた。
 検事と熊城は衝動的に眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》ったが、法水は和やかな声で、
「では、最初からの事を云い給え」
「初めは、確か十一時半頃だったろうと思いますが」と庄十郎は、割合|悪怯《わるび》れのしない態度で答弁を始めた。「礼拝堂と換衣室との間の廊下で、死人色《しびといろ》をしたあの男に出会いました。その時易介さんは、とんだ悪運に魅入られて真先に嫌疑者にされてしまった――と、爪の色までも変ってしまったような声で、愚痴たらたらに並べはじめましたが、私は、ひょいと見るとあまり充血している眼をして
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