イエンス》なんだが、まずデイは、瘧《おこり》患者を附添いといっしょに一室へ入れ、鍵を附添いに与えて扉を鎖さしめる。そして、約一時間後に扉を開くと、鍵が下りているにもかかわらず、扉は化性のものでもあるかのように、スウッと開かれてしまう。そこでデイは結論する――憑神《つきがみ》の半山羊人《フォーン》は遁《のが》れたり――と。ところが、まさしく扉の附近には山羊の臭気がするので、それで患者は精神的に治癒されてしまうのだ。ねえ熊城君、その山羊の臭気というものの中に、デイの詐術が含まれているのだよ。ところで、君はたぶん、ランプレヒト湿度計《ハイグロメーター》にもあるとおりで、毛髪が湿度によって伸縮するばかりでなく、その度が長さに比例する事実も知っているだろう。そこで、試みに、その伸縮の理論を、落し金の微妙な動きに応用して見給え。知ってのとおり、弾条《ぜんまい》で使用する落し金というのは、元来、打附木材住宅《ハーフ・チムバア》([#ここから割り注]漆喰壁の上に規則的な木配りで荒削りの木材を打ち附ける英国十八世紀初頭の建築様式[#ここで割り注終わり])特有のものと云われているのだが、大体が平たい真鍮|
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