の一人が殺されたと云うのに」
「今日は、この館の設計者クロード・ディグスビイの忌斎日《きさいび》でして……」と真斎は苦し気な呼吸の下に答えた。「館の暦表の中に、帰国の船中|蘭貢《ラングーン》で身を投げた、ディグスビイの追憶が含まれているのです」
「なるほど、声のない鎮魂楽《レキエム》ですね」と法水は恍惚《こうこつ》となって云った。「なんだかジョン・ステーナーの作風に似ているような気がする。支倉君、僕はこの事件であの四重奏団《クワルテット》の演奏が聴けようとは思わなかったよ。サア、礼拝堂へ行ってみよう」
そうして、私服に真斎の手当を命じて、この室《へや》を去らしめると、
「君は何故《なぜ》、最後の一歩というところで追求を弛《ゆる》めたのだ?」と熊城はさっそくに詰《なじ》り掛ったが、意外にも、法水は爆笑を上げて、
「すると、あれを本気にしているのかい」
検事も熊城も、途端に嘲笑されたことは覚ったけれども、あれほど整然たる条理に、とうていそのままを信ずることは出来なかった。法水は可笑《おか》しさを耐えるような顔で、続いて云った。
「実をいうと、あれは僕の一番厭な恫※[#「りっしんべん+曷
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