は、それとともに――解《げ》し難い異状が、真斎に起った。
 それが、始め上体に衝動が起ったと見る間に、両眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みひら》き口を喇叭《ラッパ》形に開いて、ちょうどムンクの老婆に見るような無残な形となった。そして、絶えず唾を嚥《の》み下そうとするもののような苦悶の状を続けていたが、そのうちようやく、
「おお、儂《わし》の身体を見るがいい。こんな不具者がどうして……」と辛《から》くも嗄《しゃが》れ声を絞り出した。が、真斎には確か咽喉部に何か異常が起ったとみえて、その後も引き続き呼吸の困難に悩み、異様な吃音《きつおん》とともに激しい苦悶が現われるのだった。その有様を、法水は異常な冷やかさで見やりながら云い続けたが、その態度には、相変らず計測的なものが現われていて、彼は自分の言《ことば》の速度《テンポ》に、周到な注意を払っているらしい。
「いや、その不具な部分を俟《ま》ってこそ、殺人を犯すことが出来たのですよ。僕は貴方の肉体でなく、その手働四輪車と敷物《カーペット》だけを見ているのです。たぶんヴェンヴェヌート・チェリニ([#ここから割り注]文芸復興期の大金
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