リー》 は、水星であると同時に、水銀の名にもなっているのです。しかし、古代の鏡は、青銅《ヴィナス》の薄膜の裏に水銀《マーキュリー》を塗って作られていたのですよ。そうすると、その鏡面に――つまり、この図では金星の後方に当るのですが、それには当然、帷幕《とばり》の後方から進んで来る犯人の顔が映ることになりましょう。何故なら、金星の半径を水星の位置にまで縮めるということは、素晴らしい殺人技巧であったと同時に、犯行が行われてゆく方向も、また博士と犯人の動きさえも同時に表わしているからなんです。そして、しだいに犯人は、それを中央の太陽の位置にまで縮めてゆきました。太陽は、当時算哲博士が終焉《しゅうえん》を遂げた位置だったのです。しかし、背面の水銀《マーキュリー》が太陽と交わった際にいったい何が起ったと思いますか?」
ああ、内惑星軌道半径縮小を比喩にして、法水は何を語ろうとするのであろうか。検事も熊城も、近代科学の精を尽した法水の推理の中へ、まさかに錬金道士の蒼暗たる世界が、前期化学《スパルジリー》特有の類似律の原理とともに、現われ出ようとは思わなかった。
「ところで田郷さん、S一字でどういうも
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