フうち、彼の眼に異常な光芒《こうぼう》が現われたかと思うと、ポンと床を蹴って、その高い反響《こだま》の中から、挙げた歓声があった。
「うんそうだ。レヴェズの失踪が、僕に栄光を与えてくれたよ。現在僕等の受難たるや、あの男の物凄い諧謔《ユーモア》を解せなかったにある。ねえ熊城君、あの鍵は殯室《モーチュアリー・ルーム》の中にあるのだよ。廊下の扉《ドア》は、内側から鎖されたんだ。そして、レヴェズは奥の屍室の中に姿を消したのだよ」
「な、何を云うんだ。君は気でも狂ったのか※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」と熊城は吃驚《びっくり》して、法水を瞶《みつ》め出した。なるほど、殯室《モーチュアリー・ルーム》の中室の床には、足跡らしい掠《かす》れ一つなかったのだ。また、横廊下の屍室の窓には、内部から固く鍵金が下されていた。しかし、ついに法水は、レヴェズに飛行絨毯《フライング・カーペット》を与えてしまったのである。
「すると、前室の湯滝を作ったのは、何のためだい。そして、中室の床に美しい幻の世界を作って、その上の足跡を消してしまったのは?」と狂熱的な口調でやり返して、最後に、演奏台の端をガンと叩いた。そして、彼の闡明《せんめい》は、あの幻怪きわまる紋章模様《ブレゾンリー》をして、ついにレヴェズの檻《おり》たらしめたのだった。
「ところで熊城君、君はよく、莨《たばこ》の烟《けむり》をパッパと輪に吐くけれども、それを気体のリズム運動と云うのだよ。ところが、それと同じ現象が、両端の温度と圧力に差異《へだたり》がある場合、中央に膨みのある洋燈《ラムプ》のホヤや、鍵孔などにも現われるのだ。それから、あの場合もう一つ注意を要するのは、中室の周壁をなしている石質なんだ。それが、バシリカ風の僧院建築などによく使われる石灰石なんだが、当然永い年月の間に風化されているだろうからね。したがって、堆塵《たいじん》の中には、水に溶解する石灰分が混っていると見て差支えないのだ。そこで、レヴェズはまず、前室に湯滝を作って濛気を発生させたのだ。すると、時間が経つにつれて、しだいに前後二つの室の、温度と圧力に隔りが出来てくるのだから、そこに、ちょうど恰好な状態が作られる。そして、鍵孔から吐き出される輪形の濛気が、中室の天井を目がけて上昇して行ったのだよ」
「なるほど、輪形の蒸気と石灰分とでか」検事は判ったように頷《うな
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