ェ異なっていることから、死者の再生などと云うよりも、もっともっと科学的論拠の確かな、一つの懸念を濃厚にするのだった。が、その時、心中で凄愴《せいそう》な黙闘を続けていた鎮子に、突如必死の気配が閃《ひらめ》いた。あくまで真実に対して良心的な彼女は、恐怖も不安も何もかも押し切ってしまったのだった。
「ああ、何もかも申し上げましょう。いかにも算哲様は、右に心臓を持った特異体質者でございました。ですけれど、何より私には、算哲様が自殺なされるのに、右肺を突いたという意志が疑わしく思われるのです。それで、試しに私は、屍体の皮下にアムモニア注射をいたしたのでございました。ところが、それには明瞭《はっきり》と、生体特有の赤色が泛《うか》んでくるではありませんか。それに、なんという怖ろしい事でしたろう。あの糸が、埋葬した翌朝には切れていたのでございましたわ。ですけど、私にはとうてい、算哲様の墓※[#「穴かんむり/石」、319−1]《ぼこう》を訪れる勇気はございませんでした」
「その糸と云うのは」検事が鋭く問い返した。
「それは、こうなのでございます」鎮子は言下に云い続けた。「実を申しますと、算哲様はひどく早期の埋葬をお懼《おそ》れになった方で、この館の建設当初にも、大規模の地下墓※[#「穴かんむり/石」、319−4]《クリプト》をお作りなったほどでございます。そして、それには秘かに、コルニツェ・カルニツキー([#ここから割り注]露皇帝アレキサンダー三世侍従[#ここで割り注終わり])式に似た、早期埋葬防止装置を設けて置いたのでした。ですから、埋葬式の夜、私はまんじりともせずに、あの電鈴《でんれい》の鳴るのをひたすら待ち佗《わ》びておりました。ところが、その夜は何事もないので、翌朝大雨の夜が明けるのを待って、念のために、裏庭の墓※[#「穴かんむり/石」、319−8]を見にまいりました。何故かと申しますなら、あの周囲《ぐるり》にある七葉樹《とち》の茂みの中には、電鈴を鳴らす開閉器《スイッチ》が隠されているからでございます。するとどうでございましたろう。その開閉器《スイッチ》の間には、山雀《やまがら》の雛《ひな》が挾まれていて、把手《とって》を引く糸が切れておりました。ああ、あの糸はたしか、地下の棺中から引かれたに相違ございません。それに棺のも、地上の棺龕《カタファルコ》の蓋も、内部《なか》
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