アこで割り注終わり])の精神萌芽説《プシアーデ》([#ここから割り注]この説は、狂信的な精神科学者特有のもので、一種の輪廻説である。すなわち、死後肉体から離れた精神は、無意識の状態となって永存する。それは非常に低いもので意識を現わすことは不可能だが、一種の衝動作用を生む力はあると云う。そして、生死の境を流転して、時折潜在意識の中にも出現すると称えるけれども、この種の学説中での最も合理的な一つである。[#ここで割り注終わり])を御存じでいらっしゃいましょうか。私だっても、確実な論拠なしには主張しはいたしません」とはたして大風な微笑を泛《うか》べて、鎮子は再び、この事件に凄風を招き寄せた。
「な、なに、精神萌芽説《プシアーデ》を※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」と法水は、突然凄じい形相になり、吃《ども》りながら叫んだ。「では、その論拠はどこにあるのです……。貴女は何故、この事件に生命不滅論を主張されるのですか。すると、算哲博士が未だに不可解な生存を続けているとでも。それとも、クロード・ディグスビイが……」
精神萌芽《プシアーデ》――その薄気味悪い一語は、最初鎮子の口から述べられ、続いて法水によって、それに不死説という註釈が与えられた。勿論その二点を脈関しているものは、この事件の底で、暗の中に生長しては音もなく拡がってゆき、しだいに境界を押し広めていったものに相違なかった。が、折が折だけに、検事と熊城には、今やその恐怖と空想が眼前において現実化されるような気がして、思わず心臓を掴み上げられたかの感がするのだった。しかし、一方の鎮子にも、法水の口からディグスビイの名が吐かれると、あたかも謎でも投げつけられたように、懐疑的な表情が泛《うか》んできて、それが、彼女の心を確《しっ》かと捉えてしまったもののように見えた。だいたい、憑着《ひょうちゃく》性の強い人物というものは、一つの懐疑に捉えられてしまうと、ほとんど無意識に近い放心状態になって、その間に異様な偶発的動作が現われるものだ。ちょうどそれに当るものか、鎮子は左の中指に嵌《は》めた指環を抜き出しては、それをクルクル指の周囲で廻しはじめ、また、抜いてみたり嵌めてみたりして、頻《しき》りと神経的な動作を繰り返しているのだった。すると、法水の眼に怪しい光が現われて、その一瞬声の杜絶えた隙に立ち上った。そして、両手を後に組んだま
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