Cに上下しているのさえ、三人の座所から明瞭《はっきり》と見える。しかし、フラフラ歩んで来て座に着くと、彼女は昂奮を鎮めるかのように両眼を閉じ、双《もろ》の腕で胸を固く締めつけていて、しばらく凝然《じいっ》と動かなかった。それに、黒地の対《つい》へ大きく浮き出している茅萱《ちがや》模様の尖《さき》が、まるで磔刑槍《はりつけやり》みたいな形で彼女の頸《くび》を取り囲んでいる。それなので、偶然に作られてしまったその異様な構図からは、妙に中世めいた問罪的な雰囲気が醸《かも》し出されてくる。そして、樫《かし》と角石とで包まれた沈鬱な死の室の周囲《ぐるり》へ、それが渦のように揺ぎ拡がってゆくのだった。やがて、法水の唇が微かに動きかけて沈黙を破ろうとしたとき、あるいは先手を打とうとしたのだろうか、突如伸子の両眼がパチリと見開かれた。そして、彼女の口からいきなり衝いて出たものがあった。
「私、告白いたしますわ。いかにも鐘鳴器《カリリヨン》室で気を失いました際には、鎧通しを握っておりました。また、易介《えきすけ》さんが殺された前後にも、今日のクリヴォフ様の出来事当時にだって、奇妙なことに、私だけには不在証明《アリバイ》と云うものが恵まれておりませんでした。いいえ、私は最初から、この事件の終点におかれているんですわ。ですから、ここで幾ら莫迦《ばか》問答を続けたところで、結局この局状《シチュエーション》には批評の余地はございませんでしょう」と伸子は何度も逼《つか》えながら、大きく呼吸《いき》を吸い込んでから、「それに、私には固有の精神|障礙《しょうがい》があって、時折ヒステリーの発作が起ります。ねえそうでございましょう。これは久我鎮子《くがしずこ》さんから伺ったことですけども、犯罪精神病理学者のクラフトエーヴィングは、ニイチェの言葉を引いて、天才の悖徳《はいとく》掠奪性を強調しております。中世紀全体を通じて最も高い人間性の特徴とみなされていたのは、幻覚を起す――云い換えれば、深い精神的|擾乱《じょうらん》の能力を持つにあり――ですと。ホホホホホ、これでございますものね。すべてがそろいもそろって、それも、明瞭過ぎるくらいに明瞭なんですわ、もう私には、自分が犯人でないと主張するのが厭《いや》になりました」
 それは、どこか彼女のものでないような声音《こわね》だった。――ほとんど自棄的な態度で
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