キものがある。けれども、十二宮《ゾーディアック》全部となると、そういう形体的な符号の記されてないものが四つあって、そこで僕は、思いがけない障壁に打衝《ぶつか》ってしまったのだよ。しかし、猶太式秘記法を歴史的にたどってゆくと、十六世紀になって、猶太《ユダヤ》労働組合とフリーメーソン結社([#ここから割り注]フリーメーソン結社――。衆知の名称なれども、この結社の本体は秘密会議にあり、それが明白なるが猶太的団体であることは、メーソン教会の床に「ダビデの楯」の図を塗り潰したものを描き、また、それが定規とコムパスのメーソン記象にも母体となり、さらに、死亡広告欄を飾る八星形が、猶太教会の彩色硝子窓に用いられているのを見ても明らかなり[#ここで割り注終わり])暗号法の中に、その欠けた部分を補うものが発見されたのだ。ねえ熊城君、驚くべきことには、この十二宮《ゾーディアック》の中に、猶太《ユダヤ》秘密記法史の全部が叩き込まれている。そうなると、あの不可解な人物クロード・ディグスビイをウエールス生れの猶太《ジュウ》だとするに異議はあるまい。言葉を換えて云うと、この事件には隠顕両様の世界にわたり、二人の猶太人《ジュウ》が現われていることになるのだよ」とそれから法水は、一々星座の形に希伯来《ヘブライ》文字を当てながら、十二宮《ゾーディアック》の解読を始めた。
[#十二宮の解読図(fig1317_32.png)入る]
 すなわち、人馬宮《サギッタリウス》の弓には※[#ヘブライ文字「SHIN」(fig1317_33.png)、277−17]《シン》、天蝎宮《スコルピウス》には※[#ヘブライ文字「LAMED」(fig1317_34.png)、277−17]《ラメド》、処女宮《ヴィルゴ》のY字形には※[#ヘブライ文字「AYIN」(fig1317_35.png)、277−17]《アイン》、獅子宮《レオ》の大鎌形には※[#ヘブライ文字「YOD」(fig1317_24.png)、277−18]《ヨッド》、双子宮《ゲミニ》の双児《ふたご》の肩組みには※[#ヘブライ文字「HE」(fig1317_36.png)、277−18]《ヘ》、勿論|金牛宮《タウルス》は、主星アルデバランの希伯来《ヘブライ》称「|神の眼《アレフ》」どおりに、第一位の※[#アレフ、1−3−60]《アレフ》となる。それから双魚宮《ピスケス》
前へ 次へ
全350ページ中198ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング