A風精《ジルフス》に関する問いを発したのだ。では何故かと云うに、僕がそれ以前に図書室を調査した時、ポープ、ファルケ、レナウなどの詩集が、最近に繙《ひもと》かれていたのを知ったからだよ。つまり、ポープの『|髪盗み《レイプ・オヴ・ゼ・ロック》』の中には、風精《ジルフス》について、いかにも虚妄《うそ》を構成するに適《ふさ》わしい記述があるからなんだ。勿論、僕が求めているのは、犯人の天稟学《ベガーブングスレーレ》だったのさ。あの中にある風精《ジルフェ》の印象を一つに集めて、それに観照の姿を浮ばしめる――その狂言の世界だ。けっして、あの狂《きちがい》詩人が、単に一個の想い出の画を描くだけで、満足するものではないと思ったからだ。そこで、僕は固唾《かたず》を嚥《の》んだ。そして、あの陰険酷烈をきわめたクリヴォフの陳述の中から、とうとう犯人の姿を掴まえることが出来たのだよ」と法水の顔には、さも当時の昂奮を回想するような疲労の色が浮んだ。けれども、彼は言《ことば》を次いで、いよいよクリヴォフ夫人を犯人に指摘しようとする、「|髪盗み《レイプ・オブ・ゼ・ロック》」の一文に解析の刀《メス》を下した。
「ところが、その解答はすこぶる簡単なんだよ。『|髪盗み《レイプ・オブ・ゼ・ロック》』の第二節には、風精《ジルフス》の部下である四人の小妖精《フェアリー》が現われる。その第一が Crispissa《クリスピッサ》 で、髪を|櫛けずる《クリスプス》妖精だ。それが、クリヴォフ夫人の洗髪《あらいがみ》を怪しい男が縛りつけた――という個所《ところ》に当る。その次は、Zephyretta《ゼフィレッタ》、すなわちそよ吹く風で[#「そよ吹く風で」に傍点]、その男が扉《ドア》の方へ遠ざかって行く――ところの記述の中に出てくる。それから三番目は、Momentilla《モメンティラ》 すなわち刻々に動くもので[#「刻々に動くもので」に傍点]、眼を覚まして夫人が見ようとしたという枕元の時計に相当するのだ。そして、最後が、Brilliante《ブリリアンテ》 すなわち輝くもの[#「輝くもの」に傍点]だが、それをクリヴォフ夫人は、怪しい男の形容に用いて、眼が真珠のように輝いていた――と云っている。けれども、それにはもう一側面の見方もあって、その真珠《パール》という言葉が、古語で白内障《そこひ》を表わしていることが判ると
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