_ンネベルグ夫人と易介《えきすけ》に続く、三回目の惨劇を予告しているのではないか。そうなると、熊城の作り上げた人間の塁壁が、第一どうなってしまうのであろう。ほとんど犯罪の続行を不可能に思わせるほどの完璧な砦《とりで》でさえも、犯人にとっては、わずか冷笑の塵にすぎないではないか。のみならず、そういう触れれば破滅を意味している、決定的な危険を冒してまでも敢行しようという、恐らく狂ったのでなければ意志に表わせぬような決慮を示しているのであるから、その不敵さに度胆を抜かれた形になってしまって、三人がしばらくの間声を奪われていたのも無理ではなかった。その日は何日目かの快晴だった。和《なご》やかな陽差が、壁面を飾っている「倫敦《ロンドン》大火之図」の下方――ちょうどブリクストン附近に落ちていて、それがしだいにテムズを越えて、一面に黒煙の漲《みなぎ》る、キングスクロスの方へ這い上って行こうとしている。しかしそれに引き換え室内の空気は、打てば金属《かね》のように響くかと思われるほどに緊張しきっていたが、法水《のりみず》は何か成算のあるらしい面持《おももち》で、ゆったりと眼を瞑《と》じ黙想に耽《ふけ》りながらも、絶えず微笑を泛《うか》べ独算気な頷《うなず》きを続けていた。やがて、熊城が無理に力味《りきみ》出したような声を出した。
「僕は真斎じゃないがね。虚妄《うそ》の烽火《のろし》には驚かんよ。あの無分別者の行動も、いよいよこれで終熄《しゅうそく》さ。だって考えて見給え。現在僕の部下は、あの四人の周囲を盾《たて》のように囲んでいる。けれども、その反面の意味が、同時に犯人の行動記録計の役も勤めていることになるんだぜ。ハハハハ法水君、なんという皮肉だろう。もしかしたら、犯人にも護衛を附けてないとも限らんのだからね」
検事は相変らず憂鬱な顔で、熊城の過信に反対の見解を述べた。
「どうして、あの四人をバラバラに離してみたところで、とうていこの惨劇は終りそうもないよ。人間の力では、どうしても止めることが不可能のような気がする。事実僕には、まだ誰か知られてない人物が、黒死館のどこかに潜んでいるような気がしてならないんだ」
「すると君は、ディグスビイが蘭貢《ラングーン》で死んだのではないと云うのか」熊城は眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って、身体を乗り出した。
「とにかく、
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