でも探すような恰好で、きょろきょろ四辺《あたり》を見廻していたが、いきなり反噬《はんぜい》的な態度に出て、
「ホホウ、この吹雪の最中に算哲様の遺骸を発掘するとなら、あんた方は令状をお持ちとみえますな」
「いや、必要とあらば、たぶん法律ぐらいは破りかねぬでしょう」と法水は冷然と酬い返した。が、この上真斎との応酬を無用とみて、率直に自説を述べはじめた。
「だいたい、貴方がおいそれと最初から口を開こうなどとは、夢にも期待していなかったのですよ。ですから、まず僕の方で、その消え失せた一人を、外包的に証明してゆきましょう。ところで貴方は、盲人の聴触覚標型という言葉を御存じですか。盲人は視覚以外のあらゆる感覚を駆使して、その個々に伝わってくる分裂したものを綜合するのです。そうして、自分に近接している物体の造型を試みようとするのですよ。ねえ田郷さん、勿論僕の眼に、その人物の姿が映ろう道理はありません。しかも、物音も聴かなければ、その一人に関する些細《ささい》な寸語さえ耳にしていないのです。しかし、この事件の開始と同時に、ある一つの遠心力が働いて、そうしてその力が、関係者の圏外はるかへ抛擲《ほうてき》してしまった一人があったのですよ。僕は、最初この館に一歩踏み入れたとき、すでにある一つの前兆とでも云いたいものを感じました。それを、召使《バトラー》の行為から観取することが出来たのでしたよ」
「すると、僕が訊ねた……」検事は異様に亢奮《こうふん》して叫んだ。そして、自分の疑念が氷解してゆく機に、達したのを悟ったのであった。法水は、検事に微笑で答えてから続けた。
「つまり、この神経黙劇にとると、最初|召使《バトラー》に導かれて大階段を上って行った時が、そもそもの開緒《アインライツング》なのでした。その折、喧《けたた》ましい警察自動車の機関《エンジン》の響がしていたのですが、その召使《バトラー》は、僕の靴が偶然|軋《きし》って微かな音を立てると、何故か先に歩んでいるにもかかわらず、竦《すく》んだような形で、身体を横に避けるのです。僕はそれを悟ると、思わず、神経に衝《つ》き上げてくるものがありました。ですから、階段を上り切るまでの間、試みに再三同じ動作を演じてみたのですが、そのつど、召使《バトラー》も同様のものを繰り返してゆくのです。明らかに、この無言の現実は、何事かを語ろうとしています。そ
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