刻とは異なり率直な陳述を始めた。「この館が、世間から化物屋敷のようには云われませんじゃろう。御承知かもしれませんが、あの四人の方々は、まだ乳離れもせぬ揺籃の頃、それぞれ本国にいる算哲様の友人の方々から送られてまいったそうです。しかし、日本に着いてからの四十年余りの間と云うものは、確かに美衣美食と高い教程でもって育《はぐく》まれていったのですから、外見だけでは、十分宮廷生活と申せましょう。ですが、儂《わし》にはそう申すよりも、むしろそういう高貴な壁で繞《めぐ》らされた、牢獄と云った方が適《ふさ》わしいような感じがしますのじゃ。ちょうどそれが、「ハイムスクリングラ]([#ここから割り注]オーディン神より創まっている古代諾威王歴代記[#ここで割り注終わり])」にある、僧正テオリディアルの執事そっくりじゃ。あの当時の日払租税のために、一生金勘定をし続けたと云うザエクス爺《おやじ》と同様、あの四人の方々も、この構内から一歩の外出すら許されていなかったのです。それでも、永年の慣習《しきたり》というものは恐ろしいもので、かえって御当人達には、人に接するのを嫌う――いわば厭人《えんじん》とでも云うような傾向が強くなってまいりました。年に一度の演奏会でさえも、招かれた批評家達には、演奏台の上から目礼するのみのことで、演奏が終れば、サッサと自室に引っ込んでしまうといった風なのでした。ですから、あの方々が、何故揺籃のうちにこの館に連れて来られ、そうして鉄の籠の中で、老いの始まるまで過さねばならなかったかということは、もう今日では、過ぎ去った古話《ザガ》にすぎません。ただそういった記録だけを残したままで、算哲様は、そっくりの秘密を墓場の中へ運ばれてしまうのです」
「ああ、ロエブみたいなことを……」と法水は、道化《おどけ》たような嘆息をしたが、「いま貴方は、あの人達の厭人癖を植物向転性《トロピズム》みたいにお考えでしたね。しかし、たぶんそれは、単位の悲劇なんでしょう」
「単位? 無論|四重奏《クワルテット》団としては、一団をなしておられたでしょうが」と真斎は単位と云った法水の言葉に、深遠な意義が潜んでいるのを知らなかった。「ところで、あの方々とお会いになられましたかな。どなたも冷厳なストイシャンです。よしんば傲慢《ごうまん》や冷酷はあっても、あれほど整美された人格が、真性の孤独以外に求められ
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