っき》人形の室で、犯人が何故絲と人形の技巧《トリック》を遺して置いたのか判るだろう。外側からの技巧《トリック》ばかりを詮索していた日には、この事件は永遠に、扉一つが鎖してしまうのだ。それに、そろそろこの辺から、ウイチグス呪法の雰囲気が濃くなってゆくような気がするじゃないか」
「すると、人形はその時の溢《こぼ》れた水を踏んだという事になるね」と検事は、引きつれたような声を出した。「もう後は、あの鈴のような音《おと》だけなんだ。これで犯人を伴った人形の存在は[#「犯人を伴った人形の存在は」に傍点]、いよいよ確定されたとみて差支えない。しかし、君の神経が閃《ひらめ》くたびごとに、その結果が、君の意向とは反対の形で現われてしまう。それは、いったいどうしたってことなんだい」
「ウム、僕にもどうも解《げ》せないんだ。まるで、穽《わな》の中を歩いているような気がするよ」と法水にも錯乱した様子が見えると、
「僕はその点が両方に通じてやしないかと思うよ。いまの真斎の混乱はどうだ。あれはけっして看過しちゃならん」とこれぞとばかりに、熊城が云った。
「ところがねえ」と法水は苦笑して、「実は、僕の恫※[#「りっしんべん+曷」、第4水準2−12−59]《どうかつ》訊問には、妙な言《ことば》だが、一種の生理|拷問《ごうもん》とでも云うものが伴っている。それがあったので、初めてあんな素晴らしい効果が生れたのだよ。ところで、二世紀アリウス神学派の豪僧フィリレイウスは、こういう談法論を述べている。霊気《ニューマ》([#ここから割り注]呼吸の義[#ここで割り注終わり])は呼気とともに体外に脱出するものなれば、その空虚を打て――と。また、比喩には隔絶したるものを択べ――と。まさに至言だよ。だから、僕が内惑星軌道半径をミリミクロン的な殺人事件に結び付けたというのも、究極のところは、共通した因数《ファクター》を容易に気づかれたくないからなんだ。そうじゃないか、エディントンの『|空間・時・及び引力《スペース・タイム・エンド・グレヴィテイション》』でも読んだ日には、その中の数字に、てんで対称的な観念がなくなってしまう。それから、ビネーのような中期の生理的心理学者でさえも、肺臓が満ちた際の均衡と、その質量的な豊かさを述べている。無論あの場合僕は、まさに吸気《いき》を引こうとする際にのみ、激情的な言葉を符合させてい
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