まはどちらの消防隊でございましょうと尋ねると、わたしらは館林近在のものでございます。と答える。
 厩橋の人は、たまげた。十数里も、よくまあ飛びつけてくれたものであると、盛んに感激の言葉を発したのである。ところが、今度は消防隊の方から、一体この火事場は、どこでございましょうという質問である。
 この質問に、また人々は眼を白黒したのであるが、ここは厩橋城下でありますと答えると、消防隊は、魔ものにつままれでもしたような顔をして、ほんとですか、館林からここまで駆けつけるのに、ものの半刻とかからなかったのだ、が変だなあ――。



底本:「『たぬき汁』以後」つり人ノベルズ、つり人社
   1993(平成5)年8月20日第1刷発行
※<>で示された編集部注は除きました。
入力:門田裕志
校正:松永正敏
2006年12月2日作成
青空文庫作成ファイル:
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