冬の鰍
佐藤垢石

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)鰍《かじか》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)雪|代《しろ》水

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「竹かんむり/奴」、第4水準2−83−37]《ど》
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 冬の美味といわれるもののうち鰍《かじか》の右に出るものはなかろう。
 肌の色はダボ沙魚《はぜ》に似て黝黒《ゆうこく》のものもあれば、薄茶色の肌に瓔珞《ようらく》[#ルビの「ようらく」は底本では「えうらく」]のような光沢を出したのもあるが、藍色の肌に不規則な雲型の斑点を浮かせて翡翠《かわせみ》の羽に見るあの清麗な光沢を出しているのが一番上等とされている。川の水温と鰍は密接な関係を持っている。北風に落葉が渦巻いて、鶺鴒《せきれい》の足跡が玉石に凍るようになれば、谷川の水は指先を切るほど冷たくなる。その頃、鰍押しの網で漁《と》ったものならば、ほんとうの至味という。また、早春奥山の雪解けて、里川の薄にごりの雪|代《しろ》水が河
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