、魚がいると思った。
二
朝鮮の水の色はよく澄んで蒼《あお》いが、空も蒼く澄んでいるのは甚だ快い。きょうで京城へ着いて四日目になるのだが、この町の空に一片の雲も認めなかったのである。朝鮮には、雲というものがないらしい。
汽車が太田と京城の中間を進んでいる時と思う。隣席の客が窓外の田圃《たんぼ》の真ん中に大きく構えているドレッチャーを指して、あれはこの辺の地下三尺ばかりのところにある砂金を掘っているのだと教えてくれた。そして、そのあたり鮮人が泥の中をかきまわしているのは、彼ら個人で砂金を捜しているのだという。北海道や大陸の方の砂金捜しの話は、聞いていたが、いま汽車の窓から見る風景のなかに砂金捜しの姿を発見したのは、夢のような心地がした。鮮人に一貫目もある大きな砂金を拾わせたいものである。
その隣席の客は語を続けて、朝鮮には至る所に金がある。昭和十四年度における朝鮮の産金予想は二十七トンであると説明した。二十七トンの金、これは私らにはどんな量か、どんな紙幣束に代わってくるか想像もつかない。恐ろしく、金が沢山あるところだと思った。そういえば、何となく赤土山がピカピカ光るよ
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