を並べている。商店のウインドに、ネオンの管が渦巻いている。あのとき、この村の縄暖簾《なわのれん》で鍋一枚七銭の馬肉を食べ、吉原土手では一枚四銭であるのに、と言って憤慨してからもう年月はいくつ流れたであろう。あの縄暖簾は、宿場のどの辺にあったのであろうか。このたび、思いがけなく傷兵慰問の旅にきて、ひさし振りに信濃路の古き山河の俤を偲び、いまもなお、わが身に去りし日のあの若き血潮が生きているであろうか、と考えてみたのであった。[#地付き](一五・四・一)
底本:「完本 たぬき汁」つり人ノベルズ、つり人社
1993(平成5)年2月10日第1刷発行
底本の親本:「随筆たぬき汁」白鴎社
1953(昭和28)年10月発行
※<>で示された編集部注は除きました。
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2007年4月2日作成
青空文庫作成ファイル:
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