採峰徘菌愚
佐藤垢石

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)佳饌《かせん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから4字下げ]
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     一

 篠秋痘鳴と山田論愚の二人が南支方向へ行くことになった。そこで私は、伊東斜酣と石毛大妖の二人を集めて、何か送別の催しをやろうではないか、という相談をはじめたのである。
 なかなか、名案が出てこない。ことあるたびに、酒ばかり飲みたがるのは時節柄大いに慎まなければならないし、釣りにはこの前の日曜日に、上総の国竹岡へ遠征したばかりだ。何かほかに面白い考えはないか、というので銘々想を練った。ところがややあって、斜酣があるあると言って膝を打つのだ。
 採蜂ハイキングがよかろう、と言う。採蜂ハイキングというのは一体どんなことをやるのかと問うて斜酣が説明するところを聞くと、一見は百聞に勝るというから、細かなことは現地において実演してみせるが、要するに蜂の子を採って、それを酒の肴にすることだ。
 また、酒か?
 いや、酒はつけたりであるが、蜂の子のおいしいことは、
  本草綱目に、
[#ここか
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