木暮がデフレーションがどうかしたとかいっている。傍聴席を出た。政党の控室を覗いて見た。ところが、どの控室にも活気がない。控室に活気のない方が、時世に誂え向きなのかも知れない。議員どもは、思う存分のことをいえない自分を憐み悲しんでいるのならば結構だが。
 議院の食堂で、豚鍋で一杯やろうかと考えたが議会には酒がないときいて、外へ出た。
 議院のそとは、夜の冷たい風が吹いていた。おお、寒い。[#地付き](一五・二・六)



底本:「完本 たぬき汁」つり人ノベルズ、つり人社
   1993(平成5)年2月10日第1刷発行
底本の親本:「随筆たぬき汁」白鴎社
   1953(昭和28)年10月発行
※<>で示された編集部注は除きました。
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2007年4月2日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全3ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 垢石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング