に違いない。代々の祖母や母が、息子のために多くの縁談のうちから、贅沢な嫁選びをしてきたほど、幸福であったのである。
賢彌の縁談も、同じようであった。いま、賢彌の祖母や母に、白羽の矢を立てられようとしているのは、大利根川を隔てた対岸である武州の、これも豪農の美しい令嬢である。仲人は、目出度い談を纏《まと》めようとして、幾度も渡し舟に乗って石坂家を訪れた。
賢彌が、岩魚の精と共に永久に深淵に棲む運命を迎えるのはいつのことであろうか。
[#地付き](昭和二十二年二月一日)
底本:「『たぬき汁』以後」つり人ノベルズ、つり人社
1993(平成5)年8月20日第1刷発行
入力:門田裕志
校正:松永正敏
2006年12月2日作成
青空文庫作成ファイル:
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