書籍の風俗
恩地孝四郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)燦爛《さんらん》たる
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)寒冷|紗《しゃ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)写真貼[#「写真貼」はママ]
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本も時代によって、さまざまな風俗を成す。前述したように本はいつもその時代の趣味好尚を映じ出している。即ち、僧俗時代、貴族時代、そうした時代の本はやはりそうした時代を明示する姿を以て遺されている。燦爛《さんらん》たる光耀を伴うような、神への尊崇と神への敬順を具象化したような宝玉や金属で飾られた寺院本、紋章や唐草や絡み模様などでけんらんと装われた貴族蔵本などは自ら過剰な、華飾的な此等の生活と風俗を具えている。蓋し当然事である。印刷術の発明、大量化以来、本は、甚だその働き場を拡大された。私蔵装飾本は、本のうちの甚だ少数なる一部となった。そして大多数は公刊装本によるものが規準となった。現代に於ては、本も甚だ多衆的なアンチームな姿を以て世紀を縦断している。この現代である。所で日本の現在、本はどんな姿をしているか。改めて
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