て止まぬところの、學問の基礎を實際的に、即ち實物の上に置く學風、即ち私の謂ふ實學の態度が、我が學園を支配することの一日も速に實現せんことを祈る。
最後につけ加へていつておきたいのは、拓本の方法である。前囘拓本展觀會の宣傳ビラを方々へ貼らせたときに、この拓本といふ字が讀めない人、したがつて意味のわからぬ人が學園の内外に隨分多かつたやうで、中には會場に來て拓本そのものを見ても、まだその作り方などに就いてよく解らない人が多かつたやうだから、今簡單に方法を話して見れば、拓すべき石碑なら石碑の上に拓すべき紙を載せて、その上を少し濕氣のあるタオルで強く押へつける。――或は豫めタオルを卷いて置いて、それを紙の上へ押しつけながら轉がす方が手際よく行くかも知れぬ、――すると壓力と濕氣の爲めに紙は石面の文字のあらゆる凸凹にまんべんなく喰ひ込む。それから少し時間を措いて、紙の濕氣が少し乾くのを見計つて、饅頭のやうにふつくら[#「ふつくら」に傍点]と作つたタンポに、油墨か――これは其目的で作つたものを賣つて居る――、又はたゞ墨汁をつけて紙の上を輕く叩けば、それで拓本が出來る。こまかい事は實際の經驗上自分で發
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