やんなんか駄《だ》目だい
鼠《ねずみ》の夢より見ないんだから
ひどいわ ひどいわ アーン ぢやピチちやん あんたは泥棒《どろぼう》を追《お》つかける夢より見ないんだわ アーン
○
(これこれみんな喧嘩《けんくわ》をするな※[#感嘆符二つ、1−8−75])
あれ? 叱《しか》られた
なんでも映《うつ》るんだなあ
(フフフ。)
○
あれニャン君が今 フフつて笑《わら》つたぞ
いま泣いた烏《からす》が笑ひだした ハハハ
だつて あんなところに映つたりして おかしいんですもの
ニャンちやん 仲直《なかなほ》りしやうね
○
あら変《へん》だわ わたしなんだか寒《さむ》くなつてきたわ
どうしたんだらうね
僕《ぼく》は少しも寒くはない
○
おお寒《さむ》い! もうたまらないわ
(ブルブルブル)
ほんとだ 少し寒くなつてきたぞ
僕《ぼく》はすこしも感《かん》じませんよ
○
ニャン君 僕とピチ君の間《あひだ》にかうしてはさまつてをいでよ
(ブルブルブル)
昔《むかし》から猫《ねこ》は 寒がりときまつてゐるんだよ
○
あれッ、これはきれいだ
ほれごらんなさい こんなに氷《こほり》だらけになつたわ
(ブルブルブル)
やあ きれいだなあ うわあ、寒い寒い
○
(実験室《ぢつけんしつ》の中《なか》の温度《おんど》をだんだん下げて 火星《くわせい》の寒《さむ》さにしてみる。)
火星の寒さはどの位《くらゐ》だらうな
おや寒く なつてきたネ
(ブルブルブルブル)
昔から犬は 寒がらない動|物《ぶつ》であつたはづだわ
○
(火星《くわせい》にも北極《ほつきよく》のやうな寒《さむ》いところがある。『極冠《きよくくわん》』と呼《よ》んでる。まんなかのは火星《くわせい》にのぼつた月《つき》だ。火星《くわせい》の寒《さむ》いところは零下《れいか》四十|度《ど》から零下《れいか》七十|度《ど》の寒《さむ》さだ。)
おお寒い寒い これはたまらん
○
あッ! ピチクンがのびちやつた
あれ?
○
お父さん! 大変です あけてください!
そんなところたたいてもだめだわ そこの扉《ドア》をあけるんだわ
[#改ページ]
コオロギと蛙《かへる》
○
やあ助かつた
お父《とう》さん ピチクンがこんなになつちまつた
こりや失敗《しつぱい》 しかし実験室《じつけんしつ》はまだ零下《れいか》四十度そこそこな
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