これは 星|野《の》博士《はかせ》のぼつちやんですか 博士は研究室《けんきうしつ》の方です


ぢや ぼくたち 中に入つてもいゝですね
あゝ ええですとも その長いらうかを通つて 突《つ》きあたりの丸《まる》い建物です


あそこだな
あらまあ
ずゐぶん長いらうかだなあ


ここがね お父《とう》さんがゐらつしやる 火星研究室《くわせいけんきうしつ》だよ
火星といふのは 人|間《げん》がすんでゐるといふ 星のことだわね
さうだよ


あら 向ふにつづいてる丸《まる》い円筒《ゑんとう》のやうな建物《たてもの》はなにかしら
あの建物は、火星へ飛《と》んでゆく、ロケットの格納庫《かくなふこ》なんだ
ちよつとのぞいてみたいわね


テン太郎さん ちよつと、まつて なんだか中の様子《やうす》がへんですよ
ほんとにへんだわ
さうかしら ぢや、ニヤンちやん調《しら》べてくれ給《たま》へ


あらまあ おどろいた 大|変《へん》だわ


(ドタバタ ドタバタ)
なかで 何か起《おこ》つたの
早く 降《お》りてくれ、何があつたか、しらしてくれ


どうしたんだ ニャンちやん
研究室の中では、ヒゲの引《ひ》つ張《ぱ》り合ひよ
それぢや、喧嘩《けんくわ》を、してゐるの


さうなのよ テン太郎さんのお父《とう》さんと月|野《の》博士《はかせ》とが
それは大変だ のぞいてみやう
それがいい


この窓《まど》からのぞいてみやう シーッしづかにしづかに
あらまあ
へんな喧嘩《けんくわ》だな


わしは、どうしても 火星《くわせい》には人|間《げん》が をらんと思ひますのぢや
いや、ちがふ 火星には人間がをりますよ


これはけしからん わしのヒゲを引《ひ》つぱつて
わしのヒゲも あなたに引ッぱられてをりますのぢや


ヒゲがぬけてしまつても わしはわしの考《かんが》へを変《か》へません
わしは首がぬけても さう信《しん》じてをりますわい


これではいつまでたつてもケリがつかん 研究《けんきう》をつづけませう
さやう 研究がだいいちです 月|野《の》さん、わしのヒゲを離《はな》して下さい


これは失礼《しつれい》
わしこそ 失礼しました


星|野《の》さん あなたはたいへんヒゲが御自慢《ごじまん》のやうですな
あなたのこそ美事《みごと》ですよ わしが、ひ
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