を天から墜《おと》したね。』
かう言つて泣きながら、その星のやうなものは、茂作の背中にぴつたりと吸ひつきました。
茂作はびつくりして水面にうかびあがり、船にのつて逃げ帰りました。
*
村の人達は、その夜いつものやうに艪拍子も賑やかに、沖の釣場にむかつて漕ぎだしました。
かがり火を昼のやうにあかるく、船腹をづらりとならべて、鼻歌をうたひながら釣針を海に投げました。
すると油のやうに静かな海の面《おもて》が、急にざわざわと、さわがしくなつてまゐりました。
そして、それは数知れないほど、たくさんの、漁師達が、ついぞ見かけたことのないやうな、名もしれぬ不思議なものが、水面で星のやうにきらきらと光りました。
そしてこの星のやうな形のものは、漁師の投げた烏賊釣針に、われさきに争つて喰ひついてあがりました。
『恨めしい茂作さん、わたしを天から落したね。』
かう言つて、その星のやうなものは釣りあげられた船の板子の上で、身を悶えてころがりながら、さめざめと泣きました。
漁師は吃驚《びつくり》して尻餅をつきました。
『わしは茂作ぢやない、茂作は陸《をか》にゐるよ』
『これは大変
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