ゐました。
 そして片つぱしから、この村の娘さんのゐる家といふ家を、のこらずあるきまはるのです。
 娘さんは、窓から、ちいさな気味のわるい顔がとつぜんあらはれたので、びつくりします。
『まあ、なんて気味のわるいひとなんでせう。とつぜん顔なんか出してさ、挽臼《ひきうす》にいれて粉にしてしまひますよ』
 となかには、プンプン怒る娘さんもゐました。娘さんたちは、悪魔の朝の挨拶などは少しも気にもとめず、さつさと身じたくをし、何時《いつ》ものやうに鍬を手にして畑に、働らきにでかけました。

 この村に、たいへん美しくそしてまたオシャレな女の子がをりました。悪魔はその女の子の家の、高い窓にいつものやうに、ひらりと飛びあがつて、猫撫で声で、
『娘さん、お早う』
 といひました。
 女の子は、大きな鏡のまへで、お化粧の真最中でしたが、この声をきいて窓を見あげました。窓の上には、なかなかりつぱな八字鬚のある男が、顔を突出してをりますので、
『お早う、お入りなさいな』
 といつて、につこりと笑ひました。すると悪魔は、ひらりと窓から部屋にとびをりて、ふいに娘さんの頭にとびかかり、女の子の髪の毛を、一つかみむ
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