ゐたのでせう。
夜が明けました。悪魔はなかなか早起きでしたから、早起き自慢の鶏たちでさへ、彼にはかなひません。鶏たちが眼をさました頃には、もう梁の上には、その姿がありませんでした。
悪魔が、そんなに朝早くから、どこへ出かけたのか、誰も知つたものがありません、そこで鶏たちは頭をよせて、いろいろと、このあやしい梁の上の悪魔のことを話し合ひました。
『夜中に、ごそごそと音がしたね』
『僕もきいた、あれは背中をかいてゐたのだよ』
『ちがふよ、何かをといでゐるやうな、いやな音だつたけど』
『きつと、爪をといでゐたのだらう』
『みんなは悪魔がなにに化けるか注意してゐなければいけないよ、そしてもしミミヅにでも化けたら、すぐ喰べてしまふんだね』
鶏たちはこんな話をいたしました。
その翌る朝
一羽の雌鶏が、小悪魔がどこへ、まい朝出かけるのか、その後をそつとつけて見ました。
すると悪魔は、ピョン、ピョン、とはねて蛙のやうな足つきをして、村へ入りこみました。そして、一軒ごとに、百姓家の窓に、はひ上つてその窓から首をつきいれて、
『娘さん、お早う』
と娘さんたちに朝のあいさつをして歩るきまはつてゐました。
そして片つぱしから、この村の娘さんのゐる家といふ家を、のこらずあるきまはるのです。
娘さんは、窓から、ちいさな気味のわるい顔がとつぜんあらはれたので、びつくりします。
『まあ、なんて気味のわるいひとなんでせう。とつぜん顔なんか出してさ、挽臼《ひきうす》にいれて粉にしてしまひますよ』
となかには、プンプン怒る娘さんもゐました。娘さんたちは、悪魔の朝の挨拶などは少しも気にもとめず、さつさと身じたくをし、何時《いつ》ものやうに鍬を手にして畑に、働らきにでかけました。
この村に、たいへん美しくそしてまたオシャレな女の子がをりました。悪魔はその女の子の家の、高い窓にいつものやうに、ひらりと飛びあがつて、猫撫で声で、
『娘さん、お早う』
といひました。
女の子は、大きな鏡のまへで、お化粧の真最中でしたが、この声をきいて窓を見あげました。窓の上には、なかなかりつぱな八字鬚のある男が、顔を突出してをりますので、
『お早う、お入りなさいな』
といつて、につこりと笑ひました。すると悪魔は、ひらりと窓から部屋にとびをりて、ふいに娘さんの頭にとびかかり、女の子の髪の毛を、一つかみむ
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