を背負つて
到る処へ狩猟し游撃する
弾丸の痕――字の跡で
悪魔を駆立つ符を綴り
自覚せる人間の眼をめざまして
暗夜の悪夢から
真昼の憧れへと
一歩/\に正しい現実の途を
踏みしめて
生きるための闘ひをさせなければならん、
私もいづれかの隊の中に
前に立てば
旗手になり
後に守れば
ラッパになる
戦後に私の屍を[#「を」に「ママ」の注記]見えなければ
毎度慶祝記念会の台上に
私の歌を[#「を」に「ママ」の注記]聞えるだらう。
[#ここで字下げ終わり]

小熊(4)[#「(4)」は縦中横]鼓膜よ、
[#ここから3字下げ]
われわれの耳よ、
さわがしい人生に
答へてくれるお前よ、
砲弾の中の歌は
どんなにお前をふるはすか、
感動をもつてわれらの耳は
ウサギ馬のやうに敏感だ、
やさしい暁の憧憬者は
たつたいま暗夜の叢の中から
とびだしたばかりだ、
そして友よ、君の弾に
私のウサギ馬は撃たる
君の真実に――、
そして倒れる、
そして蘇生する、
そして君を乗せて共同の路を走りだす、
[#ここで字下げ終わり]

雷(5)[#「(5)」は縦中横] 私と君
[#ここから3字下げ]
いや、私達と
無数の勤労大衆に
無条件的に
そして必然的に
親善と合作をする事は出来る
しかし強盗は
ある家の主との[#「の」に「ママ」の注記]犬に
親善と合作をするといふのは
匕首を出す前に
屈服せるうまい訂[#「訂」に「ママ」の注記]約だ、
我々は 見よ
外の強盗らは
この強盗をにらみながら、
ピストルを持ち上げて
その家の窓へか
門へかと
忍び込まうとするのだ。
[#ここで字下げ終わり]

小熊(6)[#「(6)」は縦中横]解放されたところ
[#ここから3字下げ]
そこには何の
戸締りもない、
自由よ
門よ、
柔軟な開閉よ
そこへの侵入者は呪はれる
そこからの進発者は
にぎやかに送別される、
[#ここで字下げ終わり]

雷(7)[#「(7)」は縦中横] 静かに 静かに
[#ここから3字下げ]
豚のやうに
馴良[#「馴良」に「ママ」の注記]であれ
こんな教訓を
頷づく者が多い
だけど我々は
聴かない、そして
抗議する
更に反対な行動が[#「が」に「ママ」の注記]する
我々は四足の獣でもなければ
両足の禽でもないだから
又、我々は
時代の尖端に
最も強い闘ひと
最も大きな創造を
自任する者を
示さねばなら
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