をぬけて、
東京にふたりで
料理屋になる。
胸にしつかりと積んでる
この島のと
その大陸のとの
お土産を
世界の釜で
料理しよう!
わが無数の餓鬼は
私達のこしらへる物が
まづくても
おいしさうに
がつ/″\食べて呉れるだらう。
[#ここで字下げ終わり]
小熊(3)[#「(3)」は縦中横]空腹な人生
[#ここから3字下げ]
かう我々はこの人生を
呼ぶ必要がある、
完全な空腹ぢやないね、
ことは我々ロマンチストは
理想の入る余地と
詩をつくる余地と
詩が大衆に愛される
余地は充分あるね
料理方も
喰ひ方も
かうして親密に
心や胃の腑に入れるものを
熱心につくり
熱心に待つてゐる
[#ここで字下げ終わり]
雷(4)[#「(4)」は縦中横] 礼儀がなく
[#ここから3字下げ]
しかし礼儀以上の
敬愛と自重を持つ我々は
きたない大地に
立派な種を播き込まうとする
その種の萌え上がる実は
黄金だらうか
丸弾[#「丸弾」に「ママ」の注記]だらうかと
いづれもかまはぬ
いづれでも飢餓の糧を
取換へる武器になる
我々はまた高い理想を
その種の中に孕ませる
――全く自由を戦取する人間の口
――彼らの強い呼吸に
[#ここから4字下げ]
陽気さの口笛を吹かせると。
[#ここで字下げ終わり]
小熊(5)[#「(5)」は縦中横]けふ嵐の中で
[#ここから3字下げ]
我々の種子はとび交つた、
炸烈する胚子は――、
地上への自由の蒔き手を
自任しよう、
二つの民族は
コルホーズ(共同農場)に
でかけてゆく
しかも我々の住んでゐるところの
コルホーズは
暁ではない、夜だ、
まつくらなんだ、
まるで手探りで種蒔いてゐる、
[#ここで字下げ終わり]
雷(6)[#「(6)」は縦中横] 飛砂走石たる野原に
[#ここから3字下げ]
我々はトラクターを進ませて
時代の最後の嵐を追ひ消さう
野獣の血肉と骸骨を、
肥料として土の中へ打ち込む
暁になると我々の
蒔いた胚子が
まるで一瞬間の間に
むら/\と空へ伸び上がる
そしていづれの端末にも
輝く花の弁が
勝利の微笑をして
招いてるだらう
その時、地球のどこにも
平和な空気が
あざやかに漂ふ
[#ここで字下げ終わり]
小熊(7)[#「(7)」は縦中横]それを夢みる
[#ここから3字下げ]
君の夢を私がみる、
私の夢を君がみたまへ、
現実の毒素的な
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