けよう
いまも鳴つてゐる
十二の時が
あいつは何の反逆もない
ゼンマイをほどいてゐる許りだ、
心の時計は三千時を打つた
心の時計は巻いてゐるときに
ほどけてゐる
ほどけてゐる時に
巻けてゐる
眼にもとまらぬほど
早く時をうつてゐる
砂がつぶやいてゐるとき
水が咆えてゐるとき
人間はなにをしてゐるのか、
愛と憎しみのために
たたかつてゐる
現実の時間を
あるがままに流してをくな、
引綱をかけて君は引くのだ
新しい時間は君のものになるだらう
貧しいものの思想はこはれない
速度を早めよう
速度を早めよう
残つてゐる仕事は
それだけだ
女のすすり泣きの歌
日本の最後の女達、
最後の――、
おそらく、すべての最後の女達――、
古い道徳と、古い習慣とに、さやうなら、
古い夢からは何も引き出されない
新しい愛の敷物の上に
お眠りなさい
新しい夢をみるやうに――、
日本の女よ、
料理の芸術家よ、
台所のミケランゼロよ、
あなたは今日も
お勝手で玉葱を切つて
眼から涙を流したり
生活のことで、
愛のことで、子供のことで、
男達のことで、泣いてゐたり
ほんとうに貴女は忙がしい、
瞳はこんこんと湧く
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