に快活に、隊を組んで行進)
○合唱青年、(力強く)我々は足にまかせて、都会、山野あらゆるところを(間)行進する(急速に)人生の早足隊だ。
○合唱婦人、(優しく)私達は、静かに、(間)男達の仕事を見守る(急速に)人生の監視隊だ。
○合唱青年、(笑ひの合唱)ワ、ハ、ハ、ハ、(皮肉に)婦人達が我々の監視隊、それは良いことだ。
○青年一、(皮肉に)そして(徐ろに間ををいて)主として縫ひもの、つくろひものを、家庭にあつては、分担してをりますか(笑)
○青年二、それも必要だ、(高く)人生のほころびの縫ひ手は、(確信的に)彼女達だ。
○青年一、(激しく皮肉に)男が破つて、女が繕ふのか。
○合唱青年、(急速に叫ぶ)我々は力の象徴だ、打て、打て、打て、打て、太鼓を(太鼓乱打)音響をもつて空を引き破れ、あらゆるものを、ほころばせ、冬の雲を春の光りが、(歓喜をもつて)強く引裂くやうに。
○合唱婦人、(優しく)ダイナモのやうに、いつも元気の良い、青年達よ、(愛撫的に)よく磨いた鎌のやうな、聡明な若者たちよ。
○婦人一、あなたたちは女性の緩慢な愛にも堪へてゐる、忍耐強い友(激情的に)打て、打て(タンバリン乱打)情緒の金の針で、あなた達の心のほころびを私達が縫つてあげませう。
○いざり一、(大声に、そしてゆつくりと)右や左の旦那さま、奥様方、御騒々しいことでござります。(感動的に)皆さま方はお親しい、仲の良いことでございます。(青年に向つて)旦那さまがた。(急速に)すべてを裂け、(自問自答的にうなづきながら)ウム、すべてを破れ、だがお前さん達はこれまで、(間)女達の手に余るほどの、(間)大きな、ほころびをつくりだした、ためしがありますまい、口幅つたいことは、慎んでもらひませう、全世界の御婦人の、名誉の下に――
婦人四、(歓喜して)ほんとうに、いざりさん貴方の言ふとほりね、男らしい男は少ないのよ、ヒステリカルに、女性的に物を破る男達が、また頗[#「頗」に「ママ」の注記]分多いの、
○婦人一、古い思想を引きさくことも遠慮勝。
○婦人二、古い愛情から、別れることにも、おつかな吃驚。
○婦人三、古い科学を叩きこはすことも、臆病で。
○婦人四、古い芸術を、追つ払ふことも消極的。
○合唱婦人、(高く笑を含んで)まだ、まだ、わたしたち女性の大きな愛の手で男達はつぐのひ切れないほど、大きな破れをつくつてはくれ
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