る硫黄の火よ
※[#「※」は「木へん+解」209−11]《かしは》を突裂《つんざく》雷火《いかづち》の前駆《さきばし》の電光《いなづま》よ、
わが白頭を焼き焦《こが》せ。
――ねいお母さん
バルダク、ボリシヱ[#「ヱ」は小文字]ウィチ
て知つてる、
彼女の傍にはいまでは十歳の少年がたつてゐる
母親の知らないこと柄を
日毎に新しくもちだしては母親を当惑させる、
――ねい、親父
僕お酒ちよつぴりのんでみたいんだよ、
――よからう
――だつてロシアのお伽話にでゝくる
バルダク、ボリシヱ[#「ヱ」は小文字]ウィチて
七つの子供なんだが
のんだくれで
いつも酒屋で寝てるんだよ、
するとキヱフの王さまが
トルコ王サルタンを攻めるのに
バルダクを大将に頼みにくるんだよ、
そしてバルダクは攻めていつて
――あゝ、あゝその次は判つたよ
敵のサルタンの七つの娘と
天幕《テント》の中で寝るんだらう
――さうだよ、さうだよ、
そして僕お酒をのんで
強くなりたいんだよ、
――そして天幕の中で寝るか
アハハハ
母親はオロオロとして
父親と息子の話の進行をきいてゐる
――まあなんていやらしい
お伽話があるんでせうね、
性の世界では嫌らしい、
男のたたかひの世界ではどうか、
七歳の大将バルダクは
七歳のトルコ王の娘が女の性と愛情で
天幕の中で男の闘ひの
意志を溶解しようとして抱擁し
なまくらなものにしようと計画する
だが毅然として少年バルダクの
たたかひの意志は固い、
女が添寝しながら、
ひそかにバルダクの脛に
目印に金泥を塗つてかへる、
夜が明け放れ、陽があがると
娘はトルコ王の城へかへる
敵王の呼び出しで首領がどれか、
ひとめで脛の金泥がバルダクと
判らうといふ性的政策
男の智慧は無限にはてなし、
やめよ、はかない性のやさしい陰ぼうよ、
夜寝てゐる間だけ、とう酔があり、
陽があがると男の酔ひは醒めるから、
いつも精神に陽のあがらない
男だけが、昼でも夜でも、女に負ける、
もし女よ、
男を捉へてをかうといふ
男の愛情を永遠に絶対的に
しようとするならば
すべての窓をとぢよ、昼でも暗く、
部屋へ、精神へ、カーテンををろせ、
あゝ、だが部屋は閉ざす
ことができようが
宇宙の明りは消すことができない、
天地をすぎてゆく巨大な太
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