はそのするどい尖端にとまつて鳴く、
私はするどい叫びに
ふさはしい世界を求めて
新しい野と、新しい林へゆく、
なんといふ私の小鳥と
周囲の調和の美しさよ。
自由よ、お前の正体は何か
自由と言ひ、自由の束縛と言ひ
町のヤマガラよ、
お前はその正体を知つてゐるか、
お前はそれを具体的に語ることができるか、
をそらく、それはお前には出来ないだらう、
ただ自由に囀り、自由に飛び廻るものが、
これらのすべてを知り、
これらのすべてを語るだらう。
町のヤマガラ、お前の芸当よ、
お前は人間の手に捕へられた、
そして怖るべき訓練が与へられた、
鳥籠の蓋をひらくと
お前はチュンチュンと鳴きながら
ここを飛びだして
小さな神殿の扉を嘴であける、
中からオミクジを咬へて
これを人間の掌の上に渡し
そしてお前は又もとの鳥籠の中へ帰つてしまふ。
お前の生活の全部がそれだ、
お前は自分の小さな体の
百層倍も大きな人間を
お前の可憐な芸当で養つてゐる、
お前、自由を忘れた町のヤマガラよ、
自由を忘れた人間のそのやうに、
与へられた習慣を
絶対的に考へてしまつた哀れなものよ、
町のヤマガラよ、
お前は鳥籠を離れた刹那に
お前は頭の上を仰いで見よ、
空はお前に行為を要求してゐる、
お前は飛びたつためには
羽をうごかさなければならない、
よしお前の羽が弱からうとも
自由を欲する努力がなされねばならぬ、
人間がお前に与へた秩序や習慣は
すべて人間に都合がよいやうに、
つくりあげられた秩序であり習慣さ、
すべて腹黒いものは
己れを肥やすために他人に
法文や秩序をつくつて与へる、
犯さうとするものは脅やかされる、
二度三度犯さうとする、
四度五度脅やかされる
するとお前のヤマガラは断念する
飛び立たうとしない
羽を忘れたのだ、
それからお前にとつて
俗に宿命と名づけれらるものが始まり
習慣と名づけられるものが続く、
すると人間はもう安心なのだ、
咬へギセルで
――さあ/\ヤマガラの芸当でござい。
と云ひながらお前の鳥籠の扉をひらく
その瞬間だ
お前が空へ飛ばねばならないのは
だがお前は飛ばない
チュン/\と鳴いてオミクジをとりにゆく、
お前の頭は何といふ悲惨な頭だ、
町のヤマガラよ
ミミズでさへも我々が捕へると
身をはげしくくねらす
嘴で三ツに切ると
三方に逃げようと努力するではないか、
お前は負けてゐ
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