帶國で中々苦しいことである――斯う云ふ行をやつた、所が神樣が之を見て思ふには彼はアヽ云ふ困難な苦行をやつて居る、彼が苦行を成就した曉には何んな恐しい力を得るか知れぬ、今の中に早く是を妨ぐるに如かぬと考へ、或は女を見せて誘惑したり或は色々苦しめて見たが、彼は少しも之が爲に屈することなくして遂に其の苦行を成就した、で神は何うしても彼に神變不可思議力を與へなければならぬやうになつた、彼は苦行を成就して得々と宅へ歸り、是までの弊衣を棄て美服に替へ啻に安樂の生活を送つたのみならず、其の神通力によつて月をして毎晩自分の住んで居る處の町を照らさしめたといふことが書いてある、實に日月の行動でも自由自在に變ずることが出來ると考へ、而して然う云ふ不思議な力も苦行によつて得られるものであると云ふことは、紀元前四五百年の頃から既に存在した信仰であつたのである、で苦行さへすれば何んな不思議なことも出來、神と雖も又彼を如何ともすべからざるので、天人共に恐れざるを得ざるものであると考へて居つた、でありますから隨分古い時代からして苦行の事は傳はつて居ります、佛教の古い經文の内にも説いてある所がある、其の當時の方法を見
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