苦行の」は底本では「若行の」]法が傳はつて居るやうに、耶蘇教にも此思想が這入込み、カトリツクの方では好んで苦行をなす、彼等も矢張叢林の生活を送り、山へ這入つて饑渇と戰ひ、俗心に克ち、見苦しい着物を着て、一生懸命にバイブルを擴げて研究して居つた、テレザーと云ふ人はカトリツクにおきましては聖人と稱せられた人であるが、此の人は好んで苦行を爲すといふよりも寧ろ苦行を樂んで居つた人である、彼は自ら自分の第一に好む所、最も欲する所のものは苦行である、自分は衷心からして何うか予をして苦ましめよ、然らざれば我をして死せしめよと神に向つて祈願したことの幾回なるを知らぬと云つて居る、苦行は勿論字の如く苦しいことには相違ないが、宗教上の熱心が激して來ると苦行に從事することが却つて面白くなるのである、學術を研究する者や、事物の發見でもなす者は、夏日熱苦しい時節でも一生懸命に研究して居る、傍から見れば夏の酷暑の時だけは休んだら宜からうと思はるるけれども、本人自身には何んとも思はぬ、却つて是を以て面白いと考へて居ると同じ事である、斯樣な譯でありまして印度からして波斯、亞拉比亞を經、其の思想慣習が次第に歐羅巴に這入
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