衆の読書興味を喚起したれば、更に町村いたるところに、公立図書館の新設を促し、ここに州立図書館は、大学拡張(ユニヴアーシテイ、エキステンシヨン)と相待て、学校外教育の至要機関となり、町村における新知識の源泉となれり。
二、米国文庫が、公立図書館と相待て発達し、相待てその用を完くしつつあること、前項既述のごとし。斯道の先達たるニユーヨーク州立図書館長メルヴイル・デユーイ氏いわく、不動公立図書館を各町村に普及せしむるは、固より望ましき限りなれども、選択、その宜しきを得たる巡回文庫により、地方在住者をして最良の図書より得らるべき娯楽と利益とのいかに多大なるかを了解せしめ、これによりてまず図書館に興味を喚起し、図書館の必要を感ぜしむるにしくはなし。
 今、巡回文庫の起源を案するに、千八百八十五年、英国「オツクスフオード」大学において、同大学より派遣せる地方講演に出席すべき学生をして、無料閲覧せしめんがため、有益なる図書、約四十冊を選択して一文庫となし、これを責任ある地方委員の手に附せり。これを英国における大学拡張巡回文庫の由来とす。この英国式巡回文庫の思想は、大学拡張に伴随して、忽ち米国に伝播し、ニユーヨーク州においては、千八百八十九年、三名の委員を挙げてこれを調査せしめ、越えて千八百九十一年、州の事業としてこれを採用するに決し、翌九十二年より着々これを実行し、今や同州大学、学校外教育部には(一)[#「(一)」は縦中横]拡張教授(二)[#「(二)」は縦中横]研究倶楽部(三)[#「(三)」は縦中横]交換(四)[#「(四)」は縦中横]巡回文庫(五)[#「(五)」は縦中横]公立図書館(六)[#「(六)」は縦中横]図書館学校の六部を置き、各種の学校と相並びて、頻に公立図書館を一般公衆に接近せしむるの方法を講じ、専ら巡回文庫をもってこれが媒介となし、これが普及を奨励しつつあり。
 三、巡回文庫は、州立図書館の管理に属す。登記を受けたる州の認定図書館は、その委員の請求により、六ヶ月を限り巡回文庫を設くることを得べく、いまだ公立図書館の設立なき地にありては納税者二十五名の申出により、これを借受けて公立図書館創立の準備に充つることを得べく、学校及研究倶楽部もまたこれを借受くることを得べく、その他、図書を必要とする団体にも、またこれが使用を特許することあり。しかしてその期限は、学校にありては当
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