供給を圧して巡回書庫に満足せず、遂に図書館の設立を見るを常とす。これを例せんに[#「これを例せんに」に傍点]、未だ菓子を味わざる児童は[#「未だ菓子を味わざる児童は」に傍点]、これを眼前に見るも[#「これを眼前に見るも」に傍点]、敢て求むることなけれども[#「敢て求むることなけれども」に傍点]、一たび[#「一たび」に傍点]、これが甘味を経験すれば[#「これが甘味を経験すれば」に傍点]、絶叫[#「絶叫」に傍点]、強請[#「強請」に傍点]、これを得ざれば止まざるがごとく[#「これを得ざれば止まざるがごとく」に傍点]、町村の公衆も[#「町村の公衆も」に傍点]、巡回書庫によりて[#「巡回書庫によりて」に傍点]、始めて読書趣味を喚起せられ[#「始めて読書趣味を喚起せられ」に傍点]、自ら図書館を設立するにあらざれば満足せざるなり[#「自ら図書館を設立するにあらざれば満足せざるなり」に傍点]。
我山口図書館の巡回書庫は、故ありて少しく事情をことにし、郡市の請求を待たず、本館より自ら進みてこれを供給するものなれば、郡市は自ら受働的となり、無償にて得らるるがために、あるいはこれを藐視することなきか。余等は、郡市が社会の趨勢に鑑み、巡回書庫を骨子として、図書館経営の歩を進めんことを茲に再び促さざるを得ず。
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附記 町村にて公私立又は小学校附設図書館(閲覧所)を設けたるとき本館当事者においてこれが管理の法、確実なりと認めたる場合に限り、その請求に応じて、本館より巡回書庫を供給するの法を設けんと欲し、当事者において現に考案中なり。
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底本:「個人別図書館論選集 佐野友三郎」日本図書館協会
1981(昭和56)年9月7日第1刷発行
初出:「山口県立山口図書館報告 第四」
1906(明治39)年1月
入力:鈴木厚司
校正:小林繁雄
2007年12月1日作成
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