、不思議なものをごらんに入れて各位の心魂をお驚かせ申すつもりでございます。……それにつきまして甚だ申訳がありませんが、提灯がありましたら借用ねがいたい」
と言って、提灯を借受けると、スタコラと出島の蘭館を出て行った。
福介は、先生が余り物事に凝り過ぎて、とうとう気が狂《ふ》れてしまったのだと思った。昼は芭蕉扇を腹の上にのっけて夕方まで眠りつづけ、とッぷりと日が暮れると、蝋燭やら物差やら縄梯子やら、何に使うのか得体の知れぬ雑多なものをひと抱えにして長崎屋を飛出して行き、夜がほのぼのと明けるころ、着物に鈎裂を拵《こしら》え身体中蜘蛛の巣だらけになってがッかりと憊《つか》れて帰って来る。
こんなことが五日程つづいた後の朝、何時になく大元気大満悦の体で帰って来て、
「福介や、とうとう鬼唐人《きとうじん》のからくりを看破《みやぶ》ってくれた。ひとを馬鹿にしやがッて、実にどうも飛んでもない野郎だ。こういう風にぎゅッと尻尾を押えた以上は、いくらジタバタしたってもう逃しっこはない。伝馬町の獄門台へ豚尾《とんび》のついた梟首《さらしくび》を押載《おしの》せてやるから待っておれ……何を魂消《たまげ》たような顔でおれの面を見ている。今夜はお前にも面白いものを見せてやるから、今のうちに昼寝でもしておいたらよかろう」
そう言って、机に向って忙しそうに短い手紙を幾つも書き出した。
長崎奉行宛に一通、与力同心衆一同として一通、甲必丹《カピタン》オルフェルト・エリアス殿並に館員御一同として一通、吉雄幸左衛門宛に一通、西善三郎へ一通、手早く認《したた》めて使者《つかい》に持たせて出してやり、朝食をおわると下帯一つになって芭蕉扇で胸のあたりを煽ぎながらぐっすりと寝込んでしまった。
とっぷりと日が暮れてから悠々と起出して衣服を替え、藤十郎と福介を連れて長崎屋を出る。
福介は心配して、
「先生、これからどちらへ」
先生は、煩《うるさ》そうに首を振って、
「煩くいうな、来て見りゃアわかるさ」
と、膠《にべ》もない。
行着いたところが古川町の闕所屋敷、唐通詞陳東海の宅だった。
まるで自分の家ででもあるように横柄な顔で玄関からズカズカと奥へ罷《まか》り通る。
そこは陳東海の居間と覚《おぼ》しく、三十畳程の広々とした部屋で、床には油団《ゆとん》を敷詰め、壁には扁額《へんがく》や聯を掛け、一
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