がうのだ。……氷盗っとが箱をかかえたのを見とどける暇があるのに、衣類のなりがわからないというはずはない。わざと曖昧な申立てをしてるところに、なにかいわくがある。有馬の湯で話をきいたときから、ことによったら、お前たちの仕業だとチャンと睨んでいたんだ」
「先生も、おひとが悪い」
「ひとが悪いのは、そっちのほうだ。……お前たちがチョイチョイ青地の家へくることはおれは知っている。それを、まるで他人のようなことを言うから、これは、こう、と、見こみをつけた」
為と寅はふるえ出して、
「こりゃあ、えれいことになった。……それで、あっしたちのほうはどうなりましょう」
「どうなるものか。……氷は溶けてあとかたなし。水から出て水にかえる。……まず、なにごともなかったことにすればいい」
底本:「久生十蘭全集 4[#「4」はローマ数字、1−13−24]」三一書房
1970(昭和45)年3月31日第1版第1刷発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2007年12月11日作成
青空文庫作成ファイル:
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