ていなかったの」
「それと、ここを出るってことに、どういう関係があるの?」
「本気になって仕事を捜さないのは、食べる心配がないからだと気がついたのよ……こんなこと、みじめだわ。きょうから、職安を回って、もしあったら、どんな仕事でもやって、性根をとりもどすつもり」
「そうしたいなら、気のすむようにしなさい……いっしょに行ってあげたいけど、きょうは出たくないの……その窓から、のぞいてごらんなさい。河岸《かし》っぷちに、神奈川県の警察部の自動車がいるでしょ……あたし、なんだか、恐いのよ」
正面玄関《フロント》の土間で、髪をとばされないようにネッカチーフで頬冠《ほおかむ》りをすると、ガラス扉にうつった姿は、それなりにショウバイニンのスタイルになっている。
「おお、いやだ」
アパートの前歴を知ってから、ここを出入りするたびに、なんとなく身がちぢむ。他人の見る目など、どうでもいいようなものだけれど、生活の自信をなくしているせいか、気持の弱りで、つい、そんなことを考えてしまう。
アパートの門を出ると、サト子は、河岸っぷちにとまっている車のそばへ行って、車房のなかをのぞいてみた。そんな気がし
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