解脱せず。
一九〇 佛と法と僧とに歸依し、正慧を以て四の聖《たふと》き諦《まこと》を觀察し、

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四の聖き諦―次の頌に言ふ所の、苦と、苦の起と、苦の滅と、苦盡に至る道なり。
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一九一 苦と、苦の起と、又苦の滅と、又苦盡に至る八支の聖道を(觀察すれば)、
一九二 此の歸依は勝なり、此の歸依は尊なり、此の歸依に因つて能く衆苦を解脱す。
一九三 尊き人は得難し、彼は隨處に生るゝに非ず、是の如き賢人の生るゝ族は安樂にして榮ゆ。
一九四 諸佛の出現は樂なり、正法を演説するは樂なり、僧衆の和合するは樂なり、和合衆の勇進するは樂なり。
一九五 應に供養せらるべき、戲論を超出せる、已《すで》に憂と愁とを渡れる、佛陀又は佛弟子を供養し、
一九六 是の如き安穩にして畏怖なき(聖者)を供養する人あらんに、能く此の福の量を計るものあらじ。
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    第十五 安樂の部

一九七 怨の中に處て慍らず、極めて樂しく生を過さん、怨ある人の中に處て怨なく住せん。
一九八 痛の中に處て痛まず、極めて樂しく生を過さん、痛める人の中に處て痛なく住せん。
一九九 貪の中に處て貪らず、極めて樂しく生を過さん、貪る人の中に處て貪らずして住せん。
二〇〇 少物をも所有せず、極めて樂しく生を過さん、喜を以て食とせん、極光淨天の如く。

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極光淨天―天國に居る一類の神。
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二〇一 勝利は怨を生ず、敗者は苦しんで臥す、勝敗を離れて寂靜なる人は樂しく臥す。
二〇二 貪に比すべき火なく、瞋に比すべき罪なく、蘊に比すべき苦なく、寂に勝るゝ樂なし。

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蘊―變化的生存の要素の集合。
寂―涅槃。
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二〇三 飢は最上の病なり、蘊は最上の苦なり、若し人如實に此を知れば最上樂の涅槃あり。
二〇四 利の第一は無病なり、滿足の第一は財なり、親族の第一は信頼なり、樂の第一は涅槃なり。
二〇五 遠離の液を飮み、又寂靜の液を(飮み)、(又)法喜の液を飮みて罪過を離れ(又)惡を離る。
二〇六 善い哉聖を見ること、(聖と)共に住するは樂なり、凡愚を見ずんば常に樂なるべし。
二〇七 凡愚と倶に道を行けば、長途に憂ふ、凡愚と共に住するは敵と(共に住するが)如く恆に苦なり、智者と共に住するは樂なり
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