てきたこころよいにおいに気がついて、「おや」「おや」といったのでありました。
ちょうちょうは花のにおいがとてもすきでしたので、こんなによいにおいがしてくるのに、それをうっちゃっておくわけにはまいりません。そこでちょうちょうたちはみんなでそうだんをして、木のところへやっていくことにきめました。そして木のためにみんなで祭《まつ》りをしてあげようということになりました。
そこではねにもようのあるいちばん大きなちょうちょうを先にして、白いのや黄色いのや、かれた木の葉みたいなのや、小さな小さなしじみみたいなのや、いろいろなちょうちょうがにおいの流れてくる方へひらひらと飛んでいきました。崖《がけ》っぷちをのぼって麦畑をこえて、小川をわたって飛んでいきました。
ところが中でいちばん小さかったしじみちょうははねがあまりつよくなかったので、小川のふちで休まなければなりませんでした。しじみちょうが小川のふちの水草《みずくさ》の葉にとまってやすんでいますと、となりの葉のうらにみたことのない虫が一ぴきうつらうつらしていることに気がつきました。
「あなたはだあれ。」としじみちょうがききました。
「ほたるで
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